2025年10月に開催されたジャングルぐるぐるMAX1の120㎞カテゴリに参加しました。
始めての100㎞超トレイルランニングでしたが無事完走することができました。
レース概要と結果
埼玉県の越生・奥武蔵・秩父山地を舞台に、1周40㎞のコースを周回します。

1周あたりの獲得標高は約2200程度で、低山や林道をひたすら上り下りします。
各選手はスタート地点にテントを設置し、中に補給物品(食糧等)を置き、戻ってくるたびに使うことが可能です。
私は120㎞の部だったので3周しました。
120㎞カテゴリは朝9時出走の翌日18時タイムリミットであり、制限時間は33時間でした。
9月に70㎞トレイルラン2に参加した際、序盤飛ばしすぎて疲労困憊しDNFした経験がトラウマとなっていたので、今回は心拍ゾーン2(私の場合110~130弱程度)で止まらずに走ることを目標にしました。
低心拍のゆるペースで長時間走るために、1か月前から近場の山を利用した距離走に取り組みました。
レース前の時点で月間走行距離は500㎞に達しており、耐久力は十分あると判断しました。
レース1周目で9時間かかるとすれば、大雑把に見積もって2周目10時間、3周目11時間としても30時間なので制限時間には間に合います。
重要なのは途中で息切れしたりケガしたりせずに走り続けることだと考えて、Insta360の自撮り棒を持ち最後尾からスタートしました。
結果は28時間超で完走し、総合5位(男子3位)になりました。
1周目は所要7時間半程度、2周目は夜間走行のため少しペースが落ち11時間、3周目は10時間程度で合計28時間でした。
教訓
超熱暴走型エンジン
私は元々発汗量が多く、同じ運動をしていても自分だけ汗で水浸しになっていることがよくあります。汗の量が多いだけでなく体も熱を発しやすいのか、夏のトレイルランニングは良く脱水症状気味になります。
スキューバダイビングでも、他のメンバーが水中で震えている中、水着にウェットスーツだけで平然としているということがよくありました。
今回のレースは気温12℃から16℃で、2日間を通して絶えず雨が降っていました。
他の選手がレインウェアを着こんでいる中、私だけTシャツの袖をまくってノースリーブスタイルで走っているのはなぜだろうと考えていましたが、やはり汗っかきで体が発熱しやすい自分の体質が原因なのかと推測しました。
エイドで休憩したり立ち止まったりすると雨と冷気を感じますが、坂を上り、走りだすとすぐに体が熱くなり、雨がちょうど体を冷やしてくれて水冷機能のような役割を果たしていることを確認しました。
本レースでは寒さを感じる場面が休憩時以外なかったので、それが順調に走れた理由の1つかもしれません。
本年1月に参加した40㎞トレランでも、メリノウール長袖1枚で最後まで走れたこと、また水分の消費がほとんどなかったことを総合すると、体質上、寒い環境の方が能力が発揮できるのではと思います。
反対に、暑い時期のレースは発汗、発熱、脱水症状からの足攣りなど散々な目に合うことが多いので、なんとかしなければなりません。
幻覚、ピンクの象はいなかったが
24時間以上寝ないで走り続けるということで、幻覚や幻聴に襲われるのではないかと想定していました。
自衛隊時代、不眠不休で行軍するような訓練(イベント)が何回かありましたが、眠気に耐えて夜の演習場を歩いていると森の奥がピンク色に光っていたり、よくわからない人影が見えたりということがありました。
今回のレースでも、夜間や夜明けに何か見るのではないかと考えていましたが、実際に幻覚を目にしました。
コースの中に、とある城址に続く登山道があります。2周目の途中、ちょうど一晩徹夜で走って夜が明けた頃にそのあたりを走っていると、「大築城跡」という看板が木にかかっていました。
このあたりに城の跡なんてあったかな、と、不意に前方、上り坂の先を見上げたところ、城のプラットフォームと思われる石垣を発見しました。
しかし、1周目に通ったときには、そのような城の跡は見ていません。道を進んで確認したところ、石垣に見えた場所には何もありませんでした。
私はこのとき、ついに幻覚が見えた、と確信しました。
恐怖の逆切れ人生相談
朝9時スタートで120㎞を走るため、日没の5時過ぎから夜明けの6時前まで、ほぼ12時間以上、闇の中を走ることになります。
人口過密のハセツネ等とは異なり、ローカルなレースであるため、夜の山の中では人に会うことがほとんどありません。
完全な暗闇の中をヘッドランプだけで走るのは改めて異様な経験だと感じます。
雨の降る中、一人で暗闇を走っていると、最近活発になったクマと遭遇するのではないか、と警戒します。
私は今回米国製クマスプレーを携行しすぐに発射できるよう肩に装着していましたが、それでも夜間の遭遇は避けたいと思い、一人で歌を歌ったり、ぶつぶつ独り言を話したりしていました。
12時間以上暗闇を走るので、やがてレパートリーが尽きて、そのときYouTubeで繰り返し視聴していた人生相談の相談者逆切れ回のセリフを延々と朗唱しました。
後日、このレースに参加した方のSNS投稿を検索していたところ、「夜間、幻聴に襲われてやむなくリタイア」という方がおりました。
「その幻聴、私の独り言じゃないよなあ……」
闇の中で私がぶつぶつ朗読していたこの人生相談が、この方を苦しめたのではないかということが気になります。
3周目は厳しい
スタート後19時間あまりで2周目(80㎞)が終了しました。この段階でまだ12時間以上あるということで、ケガや不測の事態がなければゴールできる見込みでした。
80㎞まではゆっくりペースで進んでおり、体力も残っていたので、この調子で行けるだろうと思ったところ大変な思い違いだとわかりました。
まず3周目をスタートする時点でエナジージェルを持ち忘れたため、持っている栄養分はピザパン1個とミックスナッツ小袋1つだけになりました。これで25㎞先のエイドまで生き延びなければなりません。
100㎞地点にたどり着き、夜が明けたあたりで、長い林道の登りが続きました。
この単調な登りで私はすさまじい眠気に襲われました。
雨で水浸し、枯れ葉、ザトウムシ、サワガニだらけの林道に横になって寝ようか、寝ようかとおもっていたとき、前を見ると道の脇から人が起き上がり歩き出すのを目撃しました。
この方は数時間ぶりに見かけた人間で、わたしの前を走っていた選手でした。睡魔に襲われているのは自分だけではなかった、と気が付きました。
そして私がほぼ寝ながら歩いている間に、この選手は路肩で横になって寝ていたのだ、と推測し、これは勝てるぞ、と不意にモチベーションがよみがえり、眠気が消失しました。
その後、この選手を追い抜いて再び走りだすことが可能になり、やがて眠気からは完全に解放されました。
このようなきっかけでメンタルや睡眠欲が変化するというとがわかったのは大変貴重な経験でした。
足の痛みと持久力の違い
ついにゴールまで数キロになったときには、足の筋肉疲労・痛みが限界に達していました。
しかし、走らなければこの苦痛が長引くだけなので、意を決してダッシュを開始しました。レース終盤になると足の痛みが先にきてしまい走ることができなくなっていましたが、持久力はまだ生きていました。
足の痛みはもう最後ということでどうでもよくなり、ラストの数キロはキロ5分半のペースで疾走しました。
心拍数を見たところ110程度と、非常にゆったりしたものでした。
ウルトラ距離を走るには持久力だけでなく足の物理的耐久力も要求されるということがわかりました。
今まで70㎞程度がトレイルランの最長距離でしたが、今回120㎞を無事完走したことで様々な教訓を得ました。
実際に経験したことで、次同じコースを走ればもっとタイムを縮められるという自信を得ました。
来年は、さらに走力・耐久力を上げて160㎞(100マイル)を完走することが目標です。
走れる筋肉とは
120㎞カテゴリで総合5位、男子3位ということで、男子の部で賞状をもらいました。
表彰式において、運営スタッフの方に、わたしの筋肉やカリフラワー耳を指摘され、格闘技トークが始まりました。
おそらく今回のレース参加者の中でも物理戦闘力は上位だったのではないかと思います。
そういえば以前、別のトレイルランニングに参加したときも、主催者の方から「あなた、何かトレランの体じゃないですね」等と声をかけられました。
工作員たるもの100㎞、200㎞の山を越えて、空から降下し、水中に身を潜めて敵を追いかけて倒す必要があります。
敵がどこに逃げようとも、地の果て、地球の果てまで追いかけて倒すには、あらゆる環境で生き延びられる技術と近接距離での戦闘力・攻撃力が不可欠です。
今後も、トレイル走力を向上させつつ、並行して近接・物理的破壊力も強化していかなければならないことを確認しました。
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落下傘の妄想
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